2018-09-20

連続トーク「市民講座 対話をひらく 第2回 清野賀子のまなざし」

画像:清野賀子写真集『THE SIGN OF LIFE』『至るところで 心を集めよ 立っていよ』

小金井アートフル・アクション!では、10月から「市民講座 対話をひらく」として連続のトークを実施します。各回にゲストを招き、いくつかの主題をめぐるプレゼンテーションと参加者と対話の時間をもうけます。結論や解決を求めることを目標とせず、断片的な小さな気づきのピースを拠りどころに、参加者それぞれが社会や自分の像をおぼろげながらであっても再確認し、また、新しい一歩を踏み出していくための場となるでしょう。

第2回「清野賀子のまなざし」
1962年生まれの写真家、清野賀子(*)さんは、社会に出て仕事に就いて間もない年齢でバブルとその後のバブル崩壊の時代を駆け抜けた世代にあたります。彼女の鋭利で優れた感受性は、この時代の意味をその身体と眼でどのようにとらえていたのでしょうか?
今回は時代の大いなる結節点でもあったバブル崩壊の後、それまでの価値が崩壊し、荒野のようなゼロ地帯から私たちが何を積み上げてきたのか、清野さんの眼差しを手がかりに考えてみたいと思います。清野さんの作品を通して、この空漠たる時代について、内省とともに立ち止まり、正視することで、未来へ希望を繋げるのかもしれません。清野さんの作品に詳しく、横浜美術館で「反記憶-現代写真Ⅱ」を企画した天野太郎さんをお招きし、ともに考えます。

*清野賀子(1962年-2009年)
1962年東京都生まれ。1987年中央公論社に入社し、『マリー・クレール』誌の編集者として活躍。1990年代に入ってから写真を撮り始め、1995年中央公論社を退社後、本格的な写真活動に入る。

日時:2018(平成30)年11月10日(土) 14:00−16:00
場所:小金井アートスポットシャトー2F(小金井市本町6−5−3 シャトー小金井2F)
ゲスト:天野太郎 (横浜市民ギャラリーあざみ野 主席学芸員、札幌国際芸術祭2020 統括ディレクター/企画ディレクター(現代アート)) 
定員:30名 参加費:無料
※事前申込不要。当日会場にお越しください。
※本プログラムは変更になる場合があります。あらかじめご了承ください。

《ゲストプロフィール》
天野太郎
横浜市民ギャラリーあざみ野 主席学芸員、札幌国際芸術祭2020 統括ディレクター/企画ディレクター(現代アート)、多摩美術大学、女子美術大学、国士舘大学、城西国際大学 各大学非常勤講師。北海道立近代美術館勤務を経て、1987年の開設準備室より横浜美術館で国内外での数々の展覧会企画に携わる。「横浜トリエンナーレ」でキュレーター(2005年 2011年※ 2014年※ / ※はキュレトリアル・ヘッド) を務めたほか、横浜美術館での担当展覧会に、「金氏徹平:溶け出す都市、空白の森 展」、「考えたときには、もう目の前にはない 石川竜一」(2016年)、「新井卓 Bright was the Morning―ある明るい朝に」(2017年)、「金川晋吾 長い間」(2018年)など多数。

《市民講座 対話をひらく とは》
メディアが伝える政治のニュースにふれる時、政治は私たちの暮らしを支える基本であるにもかかわらず、その物事の決め方、決まり方のぞんざいさに驚嘆しつつもあっという間になれ親しみ、また、ネット上を飛び交う情報の数々にも、量、質を問うことなどなく、伝えられた多様さの断片を、それぞれの理解によって都合よくすくいとって何かを理解したことになっているように感じます。私には私たちが複雑で高速で変化する、とても感情的な社会を生きているように思えます。

出来事のそれぞれの相互関係や因果関係も、関係の複雑さと変化の速度の速さとともに上滑りし、出来事自体が短時間で忘れ去られていきます。苛烈な出来事や心を震わせる出来事や事件、事故が日々起こっているにも関わらず、一つ一つが絵空事のように軽薄に扱われ、明快な像を結ばない社会のありようは、まるで中空に浮いた真空地帯ともいえるかもしれません。社会全体がリアリティーを薄め、また、そこに生きる私たち一人一人の存在のリアリティーも同じように薄められていき、あたかもアミューズメントあるいはゲームの世界のような空々しさの上に漂うようです。

私たちの時代の優れたアーティストは、自覚的か無自覚かに関わらず、否応無しにこの社会の特性を端的につかみ取り、さまざまな方法で描き出していきます。アートはとても感情的な行為でもありますが、優れた表現の営みの中にはそれぞれのアーティストの真摯な探求が押し流されずに存在します。私たちはこの作品群を「今」を照らすものとしてとらえ、読み解き、礎とし、あるいは私たちを反照するものとしながら、既成の価値にとらわれない生のリアリティーを獲得する対話の試みを多くの人と始めてみたいと思います。

このような対話の場を市民のみなさんとともに重ねていくことは、日本社会の中で萎縮し縮小しがちな表現の可能性を拡張することにつながります。特に自己確認や承認欲求の対象としての表現ではなく、この対話の存在が表現のありようをもっと多様に、豊かに拡張していくことにつながるとしたら、それは翻って、私たちがこれからの社会を生きていくためのさまざまな可能性も同時に拡張するものとなっていくでしょう。
企画:宮下美穂(NPO法人アートフル・アクション 事務局長)

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E-mail: mail@artfullaction.net HP:https://artfullaction.net/
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■小金井アートフル・アクション!(小金井市芸術文化振興計画推進事業)とは
「誰もが芸術文化を楽しめるまち~芸術文化の振興で人とまちを豊かに」という理念の実現を目指し、2009 年 4 月から市内各所で事業が進められています。2011年度から、東京都、小金井市、アーツカウンシル東京(公益財団法人東京都歴史文化財団)、NPO法人アートフル・アクションの 4 者共催により「東京アートポイント計画」の一環として実施されています。

■小金井アートフル・アクション!(小金井市芸術文化振興計画推進事業)とは「誰もが芸術文化を楽しめるまち 芸術文化の振興で人とまちを豊かに」という理念の実現を目指し、2009 年 4 月から市内各所で事業が進められています。2011年度から、東京都、小金井市、アーツカウンシル東京(公益財団法人東京都歴史文化財団)、NPO法人アートフル・アクションの 4 者共催により「東京アートポイント計画」の一環として実施されています。

主催:東京都、小金井市、アーツカウンシル東京(公益財団法人東京都歴史文化財団)、NPO法人アートフル・アクション