This conceptual and minimalist sound installation project is designed to address the significance of the notion of breath in the contemporary cultural (and intercultural) political, social and transgenerational contexts, from the perspective of experimental art-meets-anthropology* approach.
Breath is not as definitive and flexible as words or direct actions, however it can manifest presence and endurance in an almost purest possible form. And a mere presence can suggest readiness for action, becoming sort of an initial tool of a silent/soft resistance – in a way very poetic and a bit abstract, but simultaneously subversively defiant.
The process of forming this project seemed, in a way, like combining intimate therapeutic sessions (as participants/collaborators were recorded in an one on one, safe environment) with rehearsing for and pre-orchestrating a strange sound composition, which unlike a regular protest (musical) piece–loud and with powerful lyrics, had also a very intimate and fleeting feeling with the presence of each of participants certainly sensed there.
Recording the source material, which came from small-scale field work experience from a dedicated research workshop that took place on 2nd and 6th of December 2023 at Koganei Art Spot Chateau 2F, Koganei, Tokyo.
* This is an example of art practice that has a very strong connection within cultural anthropology, as it deals mostly with already existing anthropological phenomena such as “resistance” itself.
Piotr Bujak
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この最小限の要素で構成されたサウンドインスタレーションは、人間の「呼吸」とその行為に着目している。芸術人類学*の文脈を用いて、異なる文化や政治、社会背景、世代を超えた視点から「呼吸」について考えることを試みている。
「呼吸」は、言葉や行動ほど明確で直接的ではないが、私たちの存在やその持続を示すことができる。「呼吸」は柔らかく詩的で、少し抽象的である一方で、非常にシンプルかつ純粋で反抗的な「抵抗の手段」の一つとなりえるのだ。
本展の素材**となった呼吸音は、アーティストが録音機を持ち、参加者/協力者と1対1で向き合った環境で録音された。その空間はある意味親密で、セラピーセッションのようだった。また、その過程は、音楽の編集作業のようでもあり、プロテストソングを作曲しているようでもあった。しかし、力強い言葉を携えるプロテストソングとは異なり、「呼吸」によって形作られるその曲/音は刹那的で儚なく、その一方で参加した一人一人の存在を確かに感じられるものだった。
ピョトル・ブヤク
*芸術人類学とは、人類学とアートの文脈を組み合わせたアプローチ。「人間とは何か」という根本的な問いを、人類学とアート、両方の視点から考える。このアート・プラクティスは、「抵抗」のようなすでに存在する人類学的現象そのものを主に扱っているため、文化人類学の中で非常に強い結びつきを持つ芸術実践の例である。
**2023年12月2日と6日に東京都小金井市の小金井アートスポットシャトー2Fで行われたリサーチ・ワークショップの小さなフィールドワークの経験から生まれた音源を録音。
(1/12/2024 内容更新)
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本展について
今回、連続ワークショップ「多摩の未来の地勢図を共に描く2023―re.*-生きることの表現」のゲストの一人であるアーティストのピョトル・ブヤクは、小金井アートスポット シャトー2Fでの約1か月の滞在制作と、5回の実験的ワークショップの実施を通じ、参加者と共に「抵抗」と「表現」についての考察を深めました。
その中で1つのキーとなったのが「抽象化」という概念です。ブヤクとのワークショップでは、「抵抗」を様々なレイヤーから考察し、参加者それぞれが「言葉」に囚われず、自身の主張を「抽象化」して表現することを試みました。ブヤクと参加者は異なる国の出身で、異なる言語を話すため、言葉での意思疎通が難しい場面がよくあり、「抵抗」についても違った感覚を抱いていました。その中でも「抽象化」が興味深い役割を果たしました。
本展の素材となった「呼吸」は、ブヤクと参加者が作業と対話を通して、様々なズレや誤解、また共感を経験しながら録音されたものです。
ピョトル・ブヤク|Piotr Bujak
1982年生まれ。東京とクラクフ在住。映像、インスタレーション、立体、テキストなど多様な技法を用いて制作を行う。アクティビストでもある。ヤン・マテイコ美術アカデミー(クラクフ、ポーランド)とサンフランシスコ・アート・インスティチュート卒業。対抗的パンク文化、ミニマリズム、コンセプチュアリズム、ネオ・アヴァンギャルド、批評的言説に関心をもつ。「低予算、素早く雑に、DIYで、打って走る(Low Budget, Quick and Dirty, Do It Yourself and Hit and Run)」を戦略としつつ、新自由主義の病理、暴力、同一性、文化や政治領域と関連する作品を制作している。https://culture.pl/en/artist/piotr-bujak
「多摩の未来の地勢図を共に描く- re.*生きることの表現」連続ワークショップについて
一見、遠く離れた、自分とは無縁に思える出来事を、自身の生きる場や日常とどのように結びつけることができるのか。急速に変化し続ける流動の時代、抗えない流れの中で、自分の時間を取り戻し、自分なりのささやかな方法で流れに抗ってみることが大切なのではないでしょうか。今の状況を、社会そのものを、より考え、そこで生きていく/抗っていく術、すなわち<生きることの表現>を「re」が頭につく3つの英単語、<retrace/再訪する, resist/作業する, record/記録する> をキーワードとしながら、集まった参加者、そして様々な背景を持つゲストと共に模索していく半年間の連続ワークショップです。https://cleavingartmeeting.com/tama-egaku-23/
主催:東京都、公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京、特定非営利活動法人アートフル・アクション