「二藤建人の引込線での作品を見ましたか?」と、早川祐太に聞きました。 その作品は、水滴を落とし、その落下を真上から観賞することができるというものでその体験は、シャワーを浴びていて、頭を下げると前髪からなだれ落ちる雫を見ているようなのですが、その時に早川祐太の作品を想像し、この展覧会を構想し始めました。
宮本智之による自主企画展『Water/proof~移動する境界~』に参加する作家3人は彫刻学科在学中から、水を傍らに置いて制作しているスタイルは現在も変わっていません。彫刻が野外に設置されれば、彫刻は自然を作品の中に取り込むことができます。
しかし彫刻はたとえどのような場所であっても、水が視覚化してくれる重力や、水平、浮力といった現象を作品に内在させることもできるのです。
彫刻を維持、継続して制作するために彫刻家は、水との距離感を意識的に獲得してきたのではないでしょうか。
早川祐太の水を使った作品は静的で、一粒を意識させるものです。管やボトルを使った装置の中で,徹底して水から距離をとった結果であり、それは何度でも再生される映像のような光景です。
宮本智之はコンクリートを使った公開制作を行い、彫刻の完成を制作過程の中で変更、迂回することを、流木のような状態と考えます。それは制作の副産物としての『アトリエ・トレース・ジョーギ』というシリーズと関係し、『ジョーギ』という副産物をもう一度作品に返すような、循環的作業の試みでもあります。
2人とは学生時代より多くの作品をお互いによく知る間柄ではありましたが、彫刻家としてそれぞれの活動とその領野の重なりを議論したことは初めての試みでした。『Water/proof~移動する境界~』では3人の最新作が展示されます。
是非、この機会をご高覧ください。
(宮本智之)
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