自分を再び位置付けられるようになる
『プシコ ナウティカ イタリア精神医学の人類学』という本を教えてもらった。
ほとんど研究書のようであるが、とても読みやすい。
きっと、研究としての精度もたかいけれど、とても深く著者の実感に裏付けられているからだろうな。一語一語に具体的なリアリティがある。
造形や創造の営みの中に、潜在する自分自身と出会う、自分で気づいていない自分自身の状況や可能性を発見するということがあるのではないかと、常々思う。
この図書の中では、「病を得た人が、かつて苦しかったことについて、他人に話すことができるようになる。そして苦しかった時と比べて今はより調子がいいと言えるのようになる。これが過程としての治療ということであり‥‥。」
この文脈の中で、少しでも本人にとって楽な状態になった時の表現として(治る、という言葉は、常々適切ではないと思うので、使いたくない。治る、ということは、マイナスがゼロあるはプラスになるような印象がある。あるいはそこで終わりという印象あり) 「自分を再び位置付けられるようになる。それは具体的な場所のことではなくて、人生の航路、魂の航路において、自分がどのあたりにいるかわかるようになるということである、とある。
なるほどなあ、と思う。
自分を位置付けられるようになる。もちろん、治療者と共に歩む道の中で、そのような状態を得ることができるようになることもあるだろう。そして、治療や寛解という文脈ではなく、造形+創造の営みには、拡張する自分自身の可能性を感じると同時に、自分を相対化し、「位置付け」を確認する(魂の航路の中で)作業としての可能性もあるのかもしれない、と、読んでいて思う。
図書の中の、このことが書かれている部分の章タイトル『主体性を返還する」。おもしろい。
はじめにー「ものがある」という経験
という文章も、とても面白い。おすすめ。