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pen友プロジェクトー越境/越えようとすることで見える境の相をめぐって'19

一人の人が見、知ることはとても微かでささやかです。
人の流動が激しくなり、しかも、望まずに境を超えざるを得ない人が地球上にあふれています。その背景、状況、痛み、を私たちはどのように想像し、理解し、寄り添い得るか?

政治や経済の「論」を学ぶことも大切ですが、想像すること、思いを馳せることのできる心や身体は、「論」からは生まれにくいような気もします。

2019年度は、アーティストを招き、身の回りのもの、ことを手がかりに記憶や歴史に丁寧に向き合うための試みを始めます。
その一人一人の内省的な向き合いから生まれる様々は柔らかなグラデーションや襞をもち、時に他者と繋がり他者を知るきっかけとなります。波間に漂うように手に届きまた手を離れる、けれどもささやかな自分以外の存在を感知しうる可能性を探りつづける試みは、今、とても大切です。願いをこめて、新たに以下の<pen友プロジェクト>を始めます。

pen友プロジェクト –わたしたちの原風景を描くために-
作家・呉夏枝(お・はぢ)は、在日韓国人の移民3世として大阪で生まれ育ち、現在はオーストラリアに移住し、移民としての生活を経験しながら、日本との間を行き来し制作活動を行なっています。
「pen友(=文通友達)プロジェクト」は、このような作家の個人的な経験や日常、ならびに、現代の日本における移民の経験を、創造/想像的な方法をとおして浮かびあがらせるためのプロジェクトです。
今年度は、小金井市や東京を中心に日本在住する移民の人々と作家とが文通をとおして出会い、交流を深め、その対話をもとに、ワークショップ、展覧会へと活動を広げていくための新しいプロジェクトを始動します。


スタッフ

  • MiyashitaMiho

主催:東京都/小金井市/アーツカウンシル東京(公益財団法人東京都歴史文化財団)/NPO法人アートフル・アクション企画制作:NPO法人アートフル・アクション


2020-04-09

00:55

2019年度に始まったpen友プロジェクト。

なぜ、この営みを始めるのか、アーティストの呉夏枝さんとプロジェクトの担当者と、それぞれの考えていることを寄せ合ってみました。
その経過を、今年度につなげるために小さな冊子を作りました。

一言で越境といっても、境を形づくる様相は様々です。時代も社会も。それぞれの出来事に心を寄せ語り合い、そしてまた新しい道を見いだすためにも、まず、私たちの感得しうる様々な境の相について考えてみたいと思います。

pen友プロジェクトは波間の船なのかもしれません、が、たくさんの人たちの多様な関わりの間で細い糸が幾重にも重層し織られていくことで複雑で豊かで太かったり細かったりの、ユニークな糸が紡がれることになるでしょう。

冊子は英語版を合わせてみていただきます。

  • MiyashitaMiho
  • プロジェクト本番

2020-02-08

14:57

心底に、すごい本だなあ、と思います。

『あいたくて ききたくて 旅にでる』(小野和子)

Pen友プロジェクトは、互いに海を渡った人どうし、海を渡らなかった人と渡った人、様々な人たちが入り交じりながら、言葉を交わし合い、それぞれの経験を、他者の経験を持って照らし出そうとするものなのかもしれません。

「移民」といった言葉が飛び交いますが、ことさらに、国籍や世代にこだわるものではなく、むしろ、異なる人の経験に出会うこと、そこに広がる世界に思いをはせること、を試みるものなのかもしれない。

ただ、アートプロジェクト、なるものの中にある、「私」を探す旅、をすこし(かなり?)離れて遠くから見ること、直接に出会うことや本物、その場に居合わせる、などという言葉に込められた「直接性」ではなく、誰かから聞いた言葉を別の誰かが聞き直す(深い共感を持って)、あるいは文通、といった間接性に、むしろ瞬間のリアリティがあるようにも思う、この頃。

体験することができなかった様々に、全身の力を傾けて思いはせること、そこにある親密に想像すること、が、直接的な対話や接触よりも、より他者の近くに立つことができるような気がする。また、実験。

このことを考え続けるためにに、この、『あいたくて ききたくて 旅にでる』は、とても大きな何か、を指し示してくれるように思います。

  • MiyashitaMiho
  • プロジェクト本番

2019-12-14

12:04

私に見えることなんて、ほんのささやかなこと。

足の下の葉っぱの陰でどんな営みがなされているか、遠い海の向こうで、誰が海を渡ろうとしているか、あるいは、隣のお宅にどんな喜びがあるのか、とかね、何もわからない。

でも、すくなくとも、自分には見えないのだ、ということはわかる。
さらに、でも、この時代に、見えないところで人々が何を喜び何に苦しんでいるのか、心を寄せることのできる人でありたいとも思う。
こんな時代だからね。立ち尽くすだけかもしれないけれど。

フランシス・アリスの「川に着く前に橋をわたるな」のことを思い出した。アーティストの営みは、時に不条理なのだけれど、でも、説明でもなくドキュメンタリーでもなく、ある感情、直観に訴えかける力を持つ、ことがある。時にユーモアの力を借りて。

向こう側にあること、みえないこと、を見る。

と言うことなのかな?

それから、『植物と叡智の守り人』と言う本を最近に。須之内さんに教えてもらった。

臨場感(笑)。

遠くから見るとただの緑や茶色の塊の森。でも、Powers of Ten みたいに、近寄ってみたり掘り下げてみたりしたら、見えるものはどんどん変わる。

そして、もしかしたら、とても大切なことは、大ー小へのズームインやズームアウトだけでなく、そこに他の植物や生き物との相互関係、人間の営みとの関係が織り成されていると言うこと。4次元だな‥。

これは、これから小学校で実施するスライムを使った算数とも繋がる。

始動。

  • MiyashitaMiho
  • プロジェクト準備

2019-10-27

21:33

京都芸術センターで、グループ展『ケソン工業団地』(展示)を見る。

越境って、なんだろう?
何のために超えるんだろう?
超えた結果、そこに何が見えるのだろう?

展示の紹介には、

ケソン工業団地は、朝鮮民主主義人民共和国が土地と労働力、大韓民国が資本と技術力を提供して形成され、南北双方の人々が共に働く特異な場として2004年から10年以上にわたって操業されていた。しかし現在は両国間の政治的緊張のため2016年より閉鎖されている。

2018年の夏、文化駅ソウル284で開催された展覧会「ケソン工業団地」は、ケソン工業団地を外から見た大きな経済の物語として語るのではなく、そこで日常生活を送っていた一人ひとりによって築かれていた親密なコミュニティにフォーカスし、ケソン工業団地の新しい肖像を描こうとする企てであった。その展覧会から、3人のアーティストによる作品を京都で紹介する。

ケソン工業団地の本質的な意味は何だったのかを問いかける。越境が可能な限られた時間の中で南北の人々の交流が育んだ種は、いかに未来へ開かれてゆくのか(省略)。

とある。

最初の展示室にある工業団地を俯瞰した写真に移る団地。何かを超えて、ここに到るのだろうか?

もう一つ、
もし、これが、いわゆる写真展だったらどうだろう?
圧倒的な不在は圧倒的な存在の照り返しだ。その、圧倒的な存在は、いわゆる同じ画角のパネルが並ぶ説明、では浮かび上がってくることは難しそうだ。

遠くに声が聞こえてくる気がする。躍動や輝きや、懸命に働く足音が聞こえる。たくさんの喜びや時に悲しみや願いも聞こえる。
止まった日付が生々しい。その生々しさを相対として抽象し、普遍的な表現に持っていくこと。理由、ではなく、意味そんなことを考える。

今回の展示は韓国での展示の一部分であったようだ。全編をみてみたいと思った。
その時、さて、どこで?とも思った。そうだな、この展示は、ここで見るのにふさわしいとも感じた。

  • MiyashitaMiho
  • プロジェクト準備

2019-10-23

09:01

今年度、越境プロジェクトにいらしていただく呉夏枝さんの、車屋美術館での展示。

呉夏枝(お・はぢ) 手にたくす、糸へたくす

残念ながら、台風でオープニングのトークが中止になってしまいましたので、今日改めてまた(笑)雨の中、北関東に。

この美術館は3度目ですが、前回はthe北関東のランドスケープの持つ光と影にやられた(笑)って感じだけれど、今日は瓦屋根に降る雨やくすむ遠くの山並みがとても美しく思えましたー。寒かったけれど。

それぞれの作品は彼女の出自と、それぞれの作品ごとに出自を負っているけれど、でも糸にたくされた思いが普遍の美しいかたちになって、そこに立ち上がっていました。

もう一つ面白いのは、影。糸は微かな風に揺れて、光を背に影をつくります。

11月の半ば、リサーチを始めます。

  • MiyashitaMiho
  • プロジェクト準備

2019-09-04

09:42

詩人の大崎清夏さんのツイッターで紹介をみた。

なにかが首のまわりに

一編の全文を出版社のウエブサイトで読むことができるという。
明け方、私は全文を読んだけれど、今、9:40分、サイトは多分混雑でひらけない。

読んでみたらいかがだろう。
違うということにある境目と重なり合いと、違うからこそ生まれる相互の尊重や愛。

河出書房、回線太くしてほしい(笑)。

  • MiyashitaMiho
  • つぶやき

2019-09-02

17:57

支援ー被支援という関係の中にも様々な層/相があって、とても複雑なのだろうと思います。

その前段階では、なによりも、他者とは誰であるのかを知ろうとする能動性も必要になります。
でも、その前に、「たすけてやるぜ」って気持ちが強すぎるのも、なんだか考えものだな、とも思います。
ぐるぐる。

自分の非力を合理化するため?もあって、もう、何年も、ただのアムネスティの会員をしています。
送られてきたチラシをみて、この手の(書き損じはがきを現金に替えて寄付します)活動はずっとあったけれど、この「箱」はなんだか展開可能?とも思いました。

チャリポンっていうの。

普通にアムネスティがいうように、読み終えた本を投函して、こちらのスタッフが古本屋さんに送る。その箱の隣に、地球上のどこかの誰かにメッセージが送れるようになったらどうだろう? この箱ととても似た箱を隣に置いて、どこに届き、お金に変わり、誰かの助けになるかもしれない本に込めるように、メッセージを募集したらどうだろう。

香港の人々、殴られる若者、裸足で逃げ惑う子供達、難民キャンプで生きる子供達を応援するための本、そして、その本をどんな気持ちを込めて投函したのかも、もう一つの箱に投函してもらったらどうだろう?

週に一度、この箱の中に込められたメッセージをこの場所でアップしてみようか。
まだ、届かない(箱が届いたら、ちゃんとアムネスティのルール通りに設置します)箱が届いたら、古本を募集しつつ、そこに込められた何かを隣の箱に投函してもらい、週に一度、ギャラリーの壁かこのページか、アップしていこうかなと思います。

乞うご期待???

  • MiyashitaMiho
  • プロジェクト準備

2019-08-29

08:04

本年度から始まるもう一つのプロジェクト「越境」。
境を超えることを考えるといろんな境目が身のまわりにあるね。
国境も隣地境界もあなたと私を隔てる皮膚も。
と考えると、闇雲に超えなくてもいいし、超えられないね。

すべからく超えればいいわけではないけれど、でも、その向こうになにがあるのか、そのものはどんな面持ちでそこに立っているのか。
見えないものへの想像力をどのように発動させることができるのか?

親しみをもって想像すると。
相手に対する信頼を持つことと。

を、キーワードに。わからなさのグラレーション、網目にどのように想像力を持って近寄るか、想像力を身体化するか?

オーストラリア在住の呉夏枝さんをゲストに、本年度はまず海外に出自を持つ人たちを交えたWSを、11月の上旬に行います。

  • MiyashitaMiho
  • プロジェクト準備