「なまの記号たち -ポートレイトの現在形-」
出品作家:小沢裕子・神馬啓佑・奥田栄希・笹岡由梨子・倉田悟・多田恋一朗・根本祐杜・村山悟郎
会期:2017年11月11日(土)-12月3日(日) 12-18時 (月・火曜休廊)
入場料:500円
会場:”Koganei Art Spot シャトー2F”
〒184-0004 東京都小金井市本町6-5-3 シャトー小金井 2F
<イベント>
オープニング・レセプション:11月11日(土) 18:00-
トーク:12月3日(日)15:00-17:00
ゲスト・花村誠一氏 (精神医学)
主催:NPO法人 アートフルアクション
展覧会概要:
この度、小金井シャトー2Fではグループ展「なまの記号たちーポートレイトの現在形」を開催いたします。本年10月にウィーンでの文化庁新進芸術家海外研修より帰国した美術家・村山悟郎が企画します。参加作家に、小沢裕子、神馬啓佑、奥田栄希、笹岡由梨子、倉田悟、多田恋一朗、根本祐杜と、80年~90年台生まれの若手から新人まで迎えます。日本におけるアートの記号的感性について提示したいと思います。全ての作家が、本展に向けて新作を発表いたします。
コンセプト<なまの記号>:
現代日本はマスメディアやネットの普及、TV・マンガ・アニメ・ゲームといったカルチャーの興隆を背景に、氾濫する記号のフローに晒されています。呼吸するように、記号につつまれているのです。これは美術も例外ではありません。人の知覚には、その記号群が還流しており、それによって自らの世界認識を形成することになります。そして芸術家はときに驚くべき感性によって、彼/彼女の現実において生きられた記号たちを鮮やかに表出させることができるのです。
本展タイトル「なまの記号」という語に託しているのは、そうした環境で育まれた記号制作の手触りです。芸術家が記号を用いて表現するさいには、彼の無意識にまで血肉化した記号制作の手つきや発露があります。いわば脳内で生成される記号のブリコラージュといった感触です。あるいは、ある記号的な配置から何らかの要素を遊離させることで、私たちの記号認識における前-解釈的な水準が明らかとなるような経験。そのような記号的な感触をありありと伴いながら、意味解釈に収束しない作品に着目します。
「なまの記号」は、解釈/概念化を経て、記号論となります。逆に言えば、記号論化される以前を、なまの記号と呼んでいます。記号が現実の状況においてその役割を終えると、記号論的な分類(シンボル、アイコン、インデックス等々)が与えられ、解釈が行われるのです。欧米の美術教育では、そうした記号論やメディア論といった概念が先んじて与えられ、実践において記号概念に新たな構成をもたらすようなアプローチがとられます。他方、メディウムを軸にした日本の美術教育は、記号にかんして良くも悪くも野放図な状況を提供しています。そうした野放図で過飽和な日本特有の記号空間のなかで、美術的なメディウムと「なまの記号」とを、見事に融和させて制作している魅力的な作家を多く見い出したいと考えたのです。
本展はこの時代において、前-解釈的な記号性を芸術制作に見てとろうとするものです。それは記号論的な構成を与えて意味解釈を問うような西洋的な記号の理論実践とは一線を画すものとなるでしょう。「なまの記号」がメディウムをともなった記号制作から生み出される現場に、ぜひ立ち会って頂きたいと思います。
サブテーマとして、人間にとってもっとも強いパターン認識の一つである「顔」を据え、人物像という美術史において通時的なジャンルを経由することで、「私たちの時代のポートレートとは?」という問いを、広く想像できるようにと企図しています。